ホームページ制作を数社に相談したものの、返ってきた提案がまったく比較できない。ページ数も前提もばらばらで、金額の差が何の差なのか分からない。この原因は制作会社の力量差ではなく、依頼側が渡した条件が揃っていないことにあります。
RFP(提案依頼書)は、その条件を揃えるための文書です。この記事では、Web制作のRFPに何を書くのか、3ページからでも機能する構成と作成手順、送付後の進め方までをまとめました。制作会社側として提案依頼を受け取る立場から、実際に差が出る項目を中心に整理しています。
結論|RFPは3ページでも効果がある
RFPは分厚い仕様書である必要はありません。次の6要素が書かれていれば、提案の比較が成立します。
- プロジェクトの目的と成果指標
- 現状の課題(数値を含む)
- 対象範囲(ページ数・機能・原稿と写真の分担)
- 予算の上限
- スケジュール
- 評価基準と選定プロセス
この6つが揃うと、各社の提案が同じ土台に乗るため、金額差の理由が読めるようになります。逆にこれらが曖昧なまま複数社に相談すると、各社が自社の得意な前提で見積を作るため、比較そのものが成立しません。「50万円」と「300万円」の提案が並ぶのは、多くの場合、依頼側が範囲を決めていないためです。
RFPとは何か|仕様書との違い
RFP(Request for Proposal=提案依頼書)とは、発注側が実現したいことと制約条件を示し、複数の候補企業から提案を募るための文書です。作り方を指定する文書ではなく、解き方を提案してもらうための文書です。
文書 | 書く人 | 内容 |
|---|---|---|
RFP(提案依頼書) | 発注側 | 目的・課題・制約。実現方法は指定しない |
提案書・見積書 | 制作会社 | RFPに対する解決策と費用 |
要件定義書 | 両者(発注後) | 実装する機能と仕様の確定内容 |
混同されやすいのは要件定義書との違いです。RFPの段階で「トップページはこの構成、CMSはこれ」と実装方法まで指定してしまうと、より良い方法を持つ会社の提案を潰すことになります。RFPでは目的と制約を示し、方法は各社に委ねるのが原則です。
記載する9項目
1. プロジェクトの目的と成果指標
最も差が出る項目です。「古くなったので新しくしたい」ではなく、「問い合わせを月3件から10件に増やす」「採用の応募数を年20名確保する」のように数値で書きます。目的が数値化されていると、提案がデザイン案の見せ合いではなく施策の提案になります。
2. 会社・事業の概要
事業内容、主要な顧客層、競合、強み。Webサイトの想定読者を制作側が理解するための情報です。会社案内やパンフレットを添付すれば足ります。
3. 現状の課題
現サイトの何が問題なのかを、可能なら数値で示します。月間セッション数、問い合わせ件数、直帰率、更新にかかっている工数など。数値がなければ「更新が自分でできない」「スマートフォンで見づらい」といった具体的な症状で構いません。数値の取り方はGA4アクセス解析の基本を参考にしてください。
4. 対象範囲
ここが金額差の最大要因です。次を明記します。
- 想定ページ数(概算でよい)
- 必要な機能(お問い合わせフォーム、ブログ更新、多言語、EC、会員機能など)
- 原稿と写真の分担:自社で用意するのか、取材・撮影・ライティングを依頼するのか
- 既存コンテンツの移行有無
原稿と写真の分担が書かれていない提案依頼は非常に多く、ここが未定のままだと各社の見積が数十万円単位でずれます。自社で用意できるかどうかを先に決めてください。
5. 技術要件・制約
希望するCMS、既存ドメインやサーバーの扱い、社内システムや予約システムとの連携、アクセシビリティ対応の要否。指定がなければ「特になし・提案を求める」と書けば十分です。
6. 予算
上限額を書きます。書かないほうが安い提案が来ると考えられがちですが、実際には各社が異なる規模を想定するため比較不能な提案が集まります。相場を把握してから記載してください(コーポレートサイト制作の費用相場)。幅を持たせた表現でも構いません。保守運用費を含むのか別枠かも明記します。
7. スケジュールと社内体制
公開希望日、決められない理由がある場合はその制約(展示会、期首、採用開始時期など)。あわせて社内の窓口担当者と決裁者、確認にかかる想定日数を書きます。制作会社が最も読みたいのは、実は確認フローの速度です。
8. 提出物と提案形式
提案書に含めてほしい項目(体制、進め方、スケジュール、見積内訳、実績)、提出期限、提出方法、デザイン案の要否。デザイン案を無償で求めるかどうかは各社の方針が分かれるため、必須にすると辞退が増えます。
9. 評価基準と選定プロセス
何を重視して選ぶのか(提案内容、費用、実績、担当者との相性など)と、その配分。加えて質問受付期間、プレゼン日程、結果連絡の時期を書きます。基準を開示すると提案の的が絞られ、質が上がります。
作成の4ステップ
- 目的と成果指標を決める(社内で完結させる):ここを制作会社に相談しながら決めると、その会社の提案に引きずられます。最初に自社で決めます。
- 現状の数値を集める:アクセス解析、問い合わせ件数、更新工数。1〜2日で集まる範囲で構いません。
- 範囲と予算を確定する:全部を一度に作らず、初期公開の範囲と第二段階に分ける判断もここで行います。
- 3〜10ページにまとめて配布する:様式は自由で、WordでもPDFでも構いません。同じ文書を全社に同時に配ることが重要です。
提案を受け取る側から見て差が出る点
CatalyDesignでも提案依頼を受け取りますが、提案の精度が上がるのは目的が数値化されているRFPです。「問い合わせを増やしたい」だけの依頼だと、サイト構造の提案をしても検証のしようがなく、結果としてデザインの話に寄ります。
逆に「月間の問い合わせを3件から10件に、半年で」と書かれていれば、サイト単体では届かない部分まで含めて提案できます。もう一つ差が出るのは原稿と写真の分担で、ここが明記されている依頼は見積の精度が上がり、後から追加費用が発生しにくくなります。制作会社の見極め方はWeb制作会社の選び方もあわせてご覧ください。
よくある失敗
- 予算を書かない:規模の想定がばらつき、比較できない提案が集まります。
- 実現方法まで指定する:より適した方法を持つ会社の提案を潰します。目的と制約だけを書きます。
- 声をかける会社を増やしすぎる:3〜4社が現実的です。5社以上になると比較と対応の工数で社内が回らなくなります。
- 機能を並べただけで目的がない:機能一覧だけのRFPには、機能を満たすだけの見積が返ってきます。
- 質問を受け付けない:前提の解釈違いが提案に反映され、比較の精度が落ちます。期間を設けて受け付けます。
- デザイン案を無償で求める:辞退や品質低下につながります。判断材料が必要なら、過去実績と設計思想の説明を求めるほうが有効です。
送付後の進め方
配布から選定までは3〜5週間を見込みます。
- 質問受付(1週間):受けた質問と回答は全社に共有します。1社だけに答えると条件差が生まれます。
- 提案提出(2週間):短すぎると提案の質が落ちます。2週間は確保してください。
- プレゼンと質疑(各60〜90分):実際の担当者が同席するかを確認します。営業担当だけの場合、着手後の体制が変わることがあります。
- 選定と連絡:不採用の会社にも必ず連絡します。次の案件で相談しやすくなります。
制作開始後の流れはホームページ制作の流れで解説しています。
まとめ
- RFPは3ページでも機能する。目的・課題・範囲・予算・スケジュール・評価基準の6要素を揃える
- 目的は数値で書く。数値化されていると提案がデザイン案の比較から施策の比較に変わる
- 金額差の最大要因は範囲、特に原稿と写真の分担。ここは必ず明記する
- 予算の上限は開示する。書かないほうが比較できない提案が集まる
- 実現方法は指定せず、目的と制約だけを示して提案を募る
- 声をかけるのは3〜4社。質問期間を設け、回答は全社に共有する
提案依頼の整理段階からご相談いただくことも可能です。サービス内容はサービス一覧をご覧ください。



