「なんとなく良い」「どこか違う」と感じても、その理由をうまく説明できずに困った経験はないでしょうか。デザインの良さを言葉にできると、社内での合意がとりやすくなり、制作の手戻りも減ります。本記事では、デザインの言語化の意味と必要な理由、感覚を理由に変える4つの手順、言語化に使える観点、日常でできる練習方法までを整理します。デザイナーだけでなく、制作を依頼する担当者の方にも役立つ内容です。
結論:デザインの言語化は「事実・印象・理由・目的」の順で考える
デザインを言語化するには、目に入った事実、受けた印象、そう感じた理由、目的との照合という4つの順で考えるのが近道です。感覚をいきなり言葉にしようとすると「おしゃれ」「かっこいい」といった形容詞で止まりますが、順を追うと根拠のある説明に変わります。
この記事の要点
- デザインの言語化とは、見た目の判断を目的や根拠と結びつけて説明できる状態にすること
- 言語化できると、社内の合意形成、修正の依頼、次の制作への応用がしやすくなる
- 身の回りのデザインを1日1つ言葉にする習慣で、言語化の力は鍛えられる
デザインの言語化とは|感覚を根拠のある説明に変えること
デザインの言語化とは、「良い」「違う」といった感覚的な判断を、要素や目的と結びつけて、ほかの人にも伝わる言葉で説明することです。デザイナーだけでなく、制作を依頼する担当者や決裁者にとっても役立つ考え方です。
たとえば「このサイトは見やすい」という感想は、言語化すると「見出しと本文の文字サイズに差があり、余白も広いため、読む順番に迷わない」という説明になります。言葉にすることで、良さの正体が具体的な要素として見えてきます。
デザインを言語化すべき3つの理由
デザインを言語化すべき理由は、「合意をとりやすくなる」「手戻りが減る」「経験を次に活かせる」の3つです。
社内での合意がとりやすくなる
デザインの判断を言葉で説明できると、見る人の好みの違いで議論がまとまらない状態を避けられます。「目的に対して、この配色が合っている理由」を示せれば、決裁者も判断しやすくなります。
修正の手戻りが減る
修正を依頼するときに「もっといい感じに」ではなく、「ボタンが背景に埋もれているので、色の差を強めたい」と伝えられると、制作側は意図どおりに直せます。認識のずれが減るため、やり取りの回数も少なくなります。
経験を次の制作に活かせる
うまくいった理由を言葉で残しておくと、別の案件でも同じ考え方を応用できます。感覚だけに頼っていると、成功が偶然のままになり、再現できません。
「なんとなく良い」を説明する4つの手順
感覚を説明に変えるには、次の4つの手順で順番に考えます。一度に理由までたどり着こうとせず、段階を分けることがポイントです。
- 事実を書き出す:何が目に入ったかを、評価を入れずに書きます。例:「最初に大きな写真が目に入り、その下に短い見出しがある」
- 印象を言葉にする:どう感じたかを書きます。例:「落ち着いていて、信頼できそうに感じる」
- 理由を要素に分解する:その印象を生んでいる要素を、色・文字・余白・配置・写真などから探します。例:「色数が少なく、余白が広い。書体が細めで整っている」
- 目的に照らして判断する:その印象が、デザインの目的とターゲットに合っているかを確かめます。例:「信頼感が大切な士業のサイトなので、方向性として合っている」
4つ目の手順が抜けると、説明は「自分がどう感じたか」で止まってしまいます。デザインの良し悪しは、最終的に目的とターゲットに合っているかで決まることを意識しておきましょう。
言語化に使える観点と言い換えの例
デザインを言語化するときは、見る観点をあらかじめ持っておくと、理由を探しやすくなります。代表的な観点と言語化の例は次のとおりです。
観点 | 確認する問い | 言語化の例 |
|---|---|---|
情報の優先順位 | 最初に何が目に入るか | サービス名より先に装飾の写真が目に入り、何の会社か伝わりにくい |
近接 | 関係する情報がまとまっているか | 料金と申し込みボタンが離れていて、次の行動が見つけにくい |
整列 | 要素の端がそろっているか | 見出しと本文の左端がそろっており、整った印象を与えている |
反復 | 同じルールが繰り返されているか | 各セクションの見出しの形が統一されていて、構造が理解しやすい |
コントラスト | 重要なものが目立っているか | ボタンの色が背景と近く、押せる場所に見えにくい |
配色 | 色が目的の印象に合っているか | 暖色が中心で親しみやすく、地域密着の店舗に合っている |
余白 | 情報を詰め込みすぎていないか | 余白が狭く、情報が多すぎる印象になっている |
近接・整列・反復・コントラストは、ロビン・ウィリアムズの『ノンデザイナーズ・デザインブック』で紹介され、デザインの基本原則として広く知られている考え方です。色の観点はWebサイトの配色の決め方、使いやすさの観点はUI/UXデザインの違いと良い設計の進め方もあわせて参考にしてください。
言語化の力を鍛える日常の練習方法
言語化の力は、身の回りのデザインを観察し、小さな気づきを言葉にする練習で鍛えられます。仕事の場面だけで練習しようとすると機会が限られますが、日常には練習の素材があふれています。
- 1日1つ、身の回りのデザインを言葉にする:駅の案内、商品パッケージ、店舗のメニューなどを見て、「なぜ見やすいのか」を1文で書きます。
- 良いものと悪いものの両方を扱う:使いにくいと感じたものも理由を言葉にすると、改善の視点が身につきます。
- 2つを比べて違いを説明する:同じ種類の商品パッケージを並べ、印象の違いを要素から説明します。
- 人に説明してみる:デザインに詳しくない人に伝わるかどうかで、言葉の具体性を確かめられます。
CatalyDesignが大切にしている考え方
CatalyDesignでは、デザインを考えるうえで、身の回りをよく見ることと、小さなことでも発見し疑問を持つことを大切にしています。「なぜこうなっているのか」という小さな疑問は、そのまま言語化の出発点になります。
デザインの言語化でよくある失敗
言語化がうまくいかない原因は、言葉の選び方よりも考える順番にあることが多くあります。次の失敗に当てはまっていないか確認してみてください。
- 形容詞だけで終わる:「おしゃれ」「かっこいい」は印象であり、理由ではありません。どの要素がその印象を生んでいるかまで分解しましょう。
- 好みを理由にする:「この色が好きだから」は、ターゲットに合う理由になりません。判断の基準は目的と届けたい相手です。
- 後付けで理由を作る:決めた案を正当化するために理由を探すと、説明に無理が生じます。判断する前に観点を持っておくことが大切です。
- 専門用語に頼りすぎる:用語を並べても、相手に伝わらなければ合意にはつながりません。誰にでもわかる言葉で説明しましょう。
まとめ:言葉にできるデザインは伝わり、再現できる
デザインの言語化は、感覚を否定するものではなく、感覚を人に伝え、次に活かせる形にするための考え方です。事実・印象・理由・目的の順で考え、観点を持って日常のデザインを言葉にする練習を続けると、説明の精度は着実に上がります。
- 言語化とは、感覚的な判断を要素や目的と結びつけて説明すること
- 合意形成、修正依頼、次の制作への応用に役立つ
- 事実・印象・理由・目的の4つの手順で考える
- 身の回りのデザインを1日1つ言葉にする習慣で力が鍛えられる
目的に合ったデザインを検討したい場合は、CatalyDesignのWebサイト制作もご覧ください。



